クワガタの話
夏になると思い出すことがある。
小学生の頃、北海道へ旅行をした折にミヤマクワガタを捕まえたことがある。
ミヤマクワガタは日本にいるクワガタにしては結構かっこいい見た目をしていて、まぁノコギリクワガタやオオクワガタなんかには人気では劣るが、逆にその少しハズした感じが「差をつけたい」小学生の私にとってぴったりだった。
私は捕まえたミヤマクワガタを飼おうと虫かごにいれ、関東の実家へ持ち帰る。
帰路の車に揺られながら、ミヤマクワガタへのストレスみたいなものを子どもなりに案じていた。
帰宅すると早速ミヤマクワガタの新居を構えた。
大きめの水槽に砂を敷き詰め、買ってきた木の棒の形をしたゼリー受けを静かに置く。
名前はスタッグ、と付けた。
クワガタを英訳するとStagだからだ。
安直で名前負けしそうだが、イケメンなミヤマクワガタにはいい名前だと思った。
約10日後には動きが悪くなり
もう10日も過ぎるとまったく動かなくなり
さらにもう10日もしたからきっと、庭の肥料になり
その数年後、庭はコンクリートで固められて駐輪スペースになった。